銃砲刀剣類登録証問題を考える29

銃砲刀剣類登録証問題を考える29 現物確認は絶対に必要か
(栃木・石川・東京)

事例42
現物確認は絶対に必要か
栃木県発行の登録証の登録内容を確認した。
銘(表)白川臣手柄山正繁
 (裏)寛政五年癸丑春二月
    於東武駿河台応杉浦義篤需作之
種別・長さ・反り・目釘穴の数・交付年月日・表銘、すべて一致している。だが、問題は裏銘であった。「杉浦義篤需作之」が台帳には「形」一字であるという。
登録審査員によりちゃんと読み取られた銘文が書かれており、すべて合致しているのだから、昭和三十七年当時の登録事務の担当者が、杉浦の杉を形と読み、それ以下の銘文の記入を怠って、台帳に記載しなかったという、ただ、それだけなのである。
それでも担当者の女性は「本県の登録台帳と不一致ですので、内容確認が必要です」の一点張りである。もちろん登録証のコピーをファクシミリで送り、原票と確認してもらった。が、らちが明かない。銘文が長く、意味が取りにくいから、杉を形と呼んで、以下を書かなかったのかもしれないが、登録審査員が読み取れなかったせいで、令和四年のわれわれが迷惑を被る・・・これを理不尽と言わずして何と言う。
 次は石川県である。登録証に都道府県の記載がなかったので、調査したところ、石川県だった。
長さ・反り・目釘穴の数・銘文(無銘)、すべて一致している。ただ、種別の記載がなく、日付がわずかに異なっているという。コピーを送付すると、石川県登録の刀であることは認めてくれたが、いささか異なるので、現物確認をお勧めします、と言う。
この登録証は昭和二十六年三月二十六日で初年度の登録である。東京都はこういう場合、登録証コピーを添えて名義変更は可能です、ということが多いので、その旨尋ねると、石川県は、届け出ていただき、受理した後、あらためて検討します、という回答であった。現物確認が必要なら必要、不必要なら不要(できればそうしてほしいのだが)と態度を明らかにしないのは優柔不断で無責任だなあと思いながら、回答を待つことにした。
しかし、待てど暮らせど回答はなかった。三日目に電話したところ、電話口の人に、また1から説明をしてようやく話が通じ、「石川県は所有者変更届書を受理しました」との回答を得た。所有者変更届書を受け付けるか否かが焦点で、その回答を待っていたのに。しょせん、他人事ということか。ともあれ、現物確認審査に出張することは避けらえたが、石川県の例も、登録時の記載の不備であることは明らかである。
 東京都も「河内大掾」を「河内掾」と書いて登録していた。現物確認審査が必要だというので、書類を書いて、特別保存刀剣鑑定書のコピーを同封して送付した。
 鑑定書の茎の写真で銘字を確認し、「大が抜けているだけですね。現物確認にいらっしゃる必要はありません。訂正交付しましょう」と言ってくれたらいいなあ、と思ったが、だめだった。東京の例も、登録時の記載ミスと確認の怠りが原因である。
 これまでに本欄で紹介した事例や、今回の栃木、石川、東京の例でははっきりすることがある。それは、今日、発生している登録証問題の多くが、登録証交付後の改竄や偽造によるものではなく、登録証交付時に、登録審査委員や事務担当による測定ミス、記載ミスが原因ということである。
 それが何年かした後に明らかになった時、登録証と原票、あるいは現物と登録証・原票とが不一致であるからという理由で、現所有者が現物確認を強要されるというのは、全く解せない話である。
 現所有者が、ほんとに些細なミスのせいで、1カ月に1回しかない登録審査会に、わざわざ足を運ぶのが当たり前だとして良いのだろうか。
 そんなことをしなくても、茎のデジタル写真をメールで添付し、それを確認して旧登録証を回収した後、訂正した登録証を再交付すれば済む話ではなかろうか(本欄で紹介したように、静岡県はその方法で訂正再交付をしている。)。
 適切に対処すればいい話だし、不正は起こり得ないと思われるのだが。不一致、即、現物確認、という対処ではなく、状況をよくよく勘案して、現所有者に負担の少ない、簡便な訂正再交付が行われる事を切に希望するものである。
 時間と負担がかかることが原因で、所有者変更の手続きを奨励している刀剣商組合や所管の警察庁の行政に逆行しているように思われる事例が続出しているのも当然のように思われる。
(登録証問題研究会)
*刀剣界新聞より転載・抜粋




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