日本刀の作り方を徹底解説

日本刀の作り方を徹底解説

日本刀の作り方

日本刀は、非常に切れ味が優れた刃物として先人たちがその時代の戦闘様式に合わせ、試行錯誤し、長い時間をかけて作られた武器です。現在は日本刀が武器に用いられることはありませんが、鉄製の美術工芸品として「Japanese Sword」として世界的に知られています。

日本刀は「心金(しんがね)」や硬い「刃金(はのがね)」など硬さの異なる鋼を使い分け、しなやかさと強さを両立させる。この表面と内側で2種類の異なる構造を持っているという特徴があります。これにより強度・耐久性・切れ味の面で非常に優れています。この記事では、最新のテクノロジーを凌駕するほどの日本刀の基本的な作り方についてご紹介します。

手順① 日本刀の材料の準備

最初に、日本刀を構成するための鉄の下処理を行います。下処理は順番に、へし作業・積沸かし作業・下鍛え、の工程があります。

へし作業

「へし作業」というのは、良質の砂鉄を溶かして固めた玉鋼(たまはがね)を加熱してへし金を作ります。へし金の作り方ですが、最初に玉鋼を加熱して1cmほどの薄い板状に打ち伸ばします。板状の塊に焼き入れをしてから「へし金」を作り、硬さごとに5段階にえり分けておきます。

積沸かし作業

「積沸かし作業」では、5段階に分けられた「へし金」を種類ごとに2~3kgほど積み重ねて和紙で包みます。藁灰を付けて粘土汁をかけてから火床に入れ、1500℃程度まで加熱してから小槌で叩いて1つの塊にします。この塊は、6cm×9cmほどの1枚の板(台)になります。

下鍛え

「下鍛え」では、「積沸かし作業」で作った台の上に1.8~2kgほどの鉄片を積み重ねて沸かし作業を繰り返して打ち固める作業を繰り返します。20cmほどの長さに延ばしてから、中央部分に切り込みを入れて折り曲げて打ち伸ばす作業を10~15回程度繰り返すことになります。この工程によって余分の炭素が除去されて鋼が均一になり、ちょうど良い硬さにすることができます。

手順② 日本刀を鍛錬する

鉄の準備ができたら、日本刀に加工する作業が進められます。次の工程は、「積沸かし」と「鍛錬・上鍛」です。

下鍛え

「下鍛え」では硬さごとに3段階の塊が作られますが、それぞれを一定の混合比で配合して合金を作ります。「積沸かし」作業を繰り返すことで、異なる硬さの鋼鉄を混合して合金化させます。

鍛錬

「鍛錬」の工程ですが、日本刀の部分ごとに場所ごとに7~15回にわたり「下鍛え」を行い、半分に折り曲げて打ち伸ばすという作業が繰り返されます。これにより、合計32,768枚もの層状の構造が作られます。1本の日本刀は心金・棟金・刃金・側近の4種類のパーツから成っており、各部分ごとにふさわしい硬さの合金に仕上げます。

上鍛(側金の上鍛え)

「上鍛(側金の上鍛え)」では、芯金を作ります。芯金の作り方ですが、「鍛錬」で鍛えた各パーツを1つに組み合わせて打ち伸ばします。12回ほど折り返し鍛錬を繰り返されることで、芯金が完成します。

手順③ 仕上げ前の工程

これから日本刀の形に成形され、仕上げ前の工程が進められ、ここでは素延べ・火造り・生仕上げ・土置き・焼き入れ、が行われます。

素延べ(すのべ)

「素延べ(すのべ)」とは、「芯金」を沸かして四角く整形することで、完成品のサイズに合わせて、使用する芯金の量を調整したり形が整えられます。

火造り

「火造り」では素延べで成形された塊を実際の刀の形に加工します。加熱して刃の先端(峰側)になる部分を切断して三角(鋭角)にし、手づちを使って刃の部分を薄くして刃物の形に成型されます。

生仕上げ

「生仕上げ」は「火造り」で成形された日本刀をヤスリやセンなどを使って荒削りをして成形します。その後に砥石で「場ならし」をしながら日本刀の形を整えていきます。この作り方によって完成後の切れ味が大きく左右されるので、とても大切な作業です。

土置き

「土置き」では最初に「生仕上げ」の後に藁灰(アク)を使って油分を除去しておきます。「土」の作り方ですが、砥石の粉・炭の粉・粘土を水で溶いて混合します。「生仕上げ」後の日本刀に刃土を塗り、焼き入れのための準備が行われます。

焼き入れ

「焼き入れ」は「土置き」された日本刀を火炉で約800℃まで加熱し、「船」と呼ばれる水槽の中に入れて急冷します。焼き入れの工程では、急冷された部分の結晶構造が硬くて密度の高い面心立方格子(γ鉄)に変化し、時間をかけて冷やされた(徐冷)部分は体心立方格子(α鉄)に変化して固まります。冷却スピードは土置きの際に塗布した土の厚さで調節されます。

γ鉄は硬くて錆びにくいですが割れや水という性質を持つので、刃の表面を構成します。これに対して中心部分を構成するα鉄は柔らかくて錆びやすいですが、しなることで折れにくくなります。ちなみに現在の鉄製品もマイクロ波を用いた焼き入れ作業が行われており、日本刀と同じようにγ鉄(表面)とα鉄(内部)の2種類の結晶構造から構成されます。

日本刀の「焼き入れ」では赤熱した鉄の色で温度を判断する必要があるため、この作業は夜間に行う必要があります。
「土置き」の際に塗る土の厚さを変えることで、焼き入れ後のγ鉄とα鉄の部分の厚さやパターンをコントロールすることが可能です。日本刀の波打つような美しい模様の作り方は、「土置き」と「焼き入れ」の組合わせによって生み出されます。

手順④ 鍛治研ぎと仕上げ調整

「焼き入れ」が済んだ日本刀は、最終的な仕上げ工程に進みます。美しい日本刀の作り方ですが、合い取り・鍛治研ぎ・茎仕立てと銘切り・研ぎ師の仕上げ磨き・仕上げ調整、を経て完成します。

合い取り

「合い取り」では焼き入れによって硬くて脆い状態になった焼刃の「焼き戻し」を行います。これにより日本刀の内部の結晶構造をα鉄(体心立方格子)に変化させることで刃の腰を強くし、強い衝撃を受けても折れにくくなります。合い取りでは焼き入れ・冷却後に約140~150℃の温度まで加熱し、結晶構造のムラを取り除きます。この時に必要に応じて小槌を使って曲がり具合や全体の形が整えられます。

鍛治研ぎ

「鍛治研ぎ」とは、刀匠が行う研ぎの作業を指します。研磨作業によって全体の形を整えたり、肉置き(膨らみ具合)を整えます。
「茎仕立てと銘切り」では、ヤスリまたは銛(せん)を使用して形を整えてから目釘穴をあけ、化粧やすりを使用して表面を美しく仕上げます。刀匠の作業はここまでで、最後に鏨(たがね)を使って銘(めい)が彫られます。銘には、制作した刀匠の名前や制作した年月日などが記されます。

研師の仕上げ磨き

「研師の仕上げ磨き」というのは研ぎ師が仕上げ研ぎを行うもので、最初は目の粗い粗砥で研磨します。工程が進むにつれて目の細かい砥石を使用して刀身全体をといでいき、刃の部分は白く、地の部分は青黒くなるように仕上げられます。最後に金属製の研き棒で研いで、美しい刃文を浮かび上がらせます。

仕上げ調整

「仕上げ調整」ですが、鞘やその他の付属物が制作されて取り付けられます。鞘の作り方ですが、鞘師と呼ばれる職人によってそれぞれの日本刀の形状に合わせてオーダーメイドで製作されます。刀に取り付けられる「柄巻き」「鐔(つば)」「はばき」なども、それぞれの職人によって取り付けられて完成にいたります。

まとめ

現在知られている日本刀の作り方は、古代から近世に至るまで長い期間をかけて多くの刀工によって改良が施されてきたものです。日本刀は武器としての実用性に加えて美術作品としての価値が非常に高く、海外でも人気を集めていて高く評価されています。昨今は有名刀工を擬人化したオンラインゲーム「刀剣乱舞」の影響で女性たちにも非常に日本刀が注目され、人気を集めています。
現代は本物の日本刀を目にする機会はほとんどありませんが、博物館などで見ることができます。日本刀に興味を持たれた方は、博物館や刀剣を専門に扱う古美術店などに出向いて実物を見てみると良いでしょう。




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