日本刀を高く売るためのチェックポイントを解説します
家を片付けていたら、いつ手に入れたか覚えていない日本刀が出てきてびっくりした、という人も多いのではないでしょうか。素人の目から見ると、日本刀など古美術品はそれほど価値がないと思われるかもしれませんが、専門家の目は違います。品物によっては予想以上に高く売れることもありますので、持て余している日本刀があったら、買取専門店に依頼することを検討してみてはいかがでしょうか。
高く売るには、買取相場を把握したり、良い買取店に依頼したりすることが大切ですが、ここでは日本刀の買取相場から高く売るコツまで詳しく説明します。
目次
日本刀の一般的な買取相場価格
中古市場で売買される商品は、それぞれ買取相場価格がつけられて、常に変動する傾向があります。しかし日本刀は他の商品よりもトレンドに流されにくく、買取相場価格は比較的安定しています。
その理由は、需要が一定してあることと、偽物か本物かを見分けるための公益財団法人日本美術保存協会が発行する鑑定書がしっかり存在していることが大きく影響しています。
日本刀はどれも皆同じだとか、値段はあってないようなものだと言われることも多くありますが、そんなことはなく、作者や保存状態によってランク付けされています。
一般的な買取相場価格を知るには、日本刀の買い取り業者がホームページ上で掲載している買取事例などから、似たような日本刀をチェックすることです。完全に同じ価格というわけではありませんが、買取相場価格をざっくりと把握できるでしょう。
ネットオークションに出品されている日本刀は、全体的に購入価格の7割前後と言われています。日本刀の種類によっても買取相場は異なり、たとえば脇差は購入価格の5割程度にとどまります。重要刀剣に指定されているものは価値が高くなり、太刀には1000万円以上の買い取り価格がつきます。
ネット上で把握できるのは、日本刀の一般的な買取相場価格であって、必ずしも同じというわけではありません。専門の鑑定士は、刀を手に取り一振り一振り実際に刀の状態を確かめてから評価額を決めます。
日本刀を売る前に必要になるもの
処分したい日本刀を売る前に、銃砲刀剣類登録証を用意しましょう。登録証は刀の売買に必要な書類で、これがなければ売却するどころか、所持すると法に抵触する恐れがあります。
登録証は、所持している日本刀の種類や特徴などが記載されていて、刀の持ち主が保管します。
つまり、刀を売却する際は、登録証も名義変更が必要です。「銃砲刀剣類登録証」の付いていない刀剣類のご売却をご検討の場合、所轄の警察署の担当部署(生活安全課)に「発見届」の手続きをしてください。必要なものは、発見された刀剣と印鑑および身分証明書です。
(詳細は、最寄りの担当部署でお尋ねください。)
その後は、各都道府県教育委員会が行う登録審査を受け、「銃砲刀剣登録証」が交付されます。登録審査料は1振り6,300円がかかります。通常紛失の場合は、発見届からの手続きが必要です。
ただし、紛失でコピーなどがあり、登録証の記載内容が正確に把握できるものは各都道府県にて再交付手続きができます。
日本美術刀剣保存協会は、日本刀の保護や管理を目的とする公益財団法人です。協会では刀の鑑定も行っていて、評価に応じてランクを付けています(特別重要刀剣・重要刀剣・特別保存刀剣、保存刀剣)。協会によって評価された刀には、鑑定書がつきますが、この書類を重要視する買取店もありますので、手元にあればその書類も、査定前に準備しておきましょう。鑑定書があれば刀を高く売ることができますので、重要です。たとえば重要刀剣に指定された日本刀は、保存状態の良いもので数千万円の買取相場がつくものもあります。
刀剣買取王は、鑑定書がない日本刀も高額買取いたします。
日本刀を高く売るのに重要なポイント
作者や日本刀のランク
従来から設定されている日本刀のランクは、切れ味によって分けられています。上から最上大業物・大業物・良業物・業物となります。江戸時代の書物になりますが、懐宝剣尺(かいほうけんじゃく)では、日本刀を切れ味別に格付けしています。
作者は山田浅右衛門(やまだあさえもん)で、刀工100名以上の刀を4つのランクに分類し、最上大業物に選ばれたのは、15工です。
たとえば古刀の中で最上大業物とされたのは、長船秀光・三原正家・長船元重・兼元(初代)・孫六兼元(2代目孫六)・和泉守兼定(之定)・長船兼光の7工になります。残りの8工は、江戸時代に作刀された新刀に分類される日本刀が選ばれています。
仕上がりの良さ別のランクもあり、それは上位から最上作・上々作・上作・中上作となります。当たり前ですが上位に格付けされた刀であればあるほど、買い取り価格も高く、破格の値段がつけられることも珍しくありません。
人気の作者が作った刀だからという理由で評価されるものもあります。
たとえば、村正や正宗は、人気の作者ですが、彼らが作刀した刀は、高く売買される傾向があります。源清麿には、過去に数億円がつけられました。このように、日本刀の価値はさまざまな角度から評価されますので、誰が作ったかわからない刀でも、専門家から高評価される可能性も出てきます。できるだけ高く売るなら、日本刀に精通した鑑定士に査定してもらうことをおすすめします。日本刀を専門に買い取るお店や、買取実績が豊富なお店を選ぶのが無難でしょう。
作られた時代
日本刀は作者や切れ味などによって評価されますが、作られた時代も大きく影響します。古美術品は古いものほど価値が出る傾向があり、日本刀も例外ではありません。刀は作られた時代によって、呼び名が変わります。一番古いものは上古刀と呼ばれる刀で、平安初期以前に作られた反りのない刀は上古刀に分類されます。姿には反りがなく直刀で、無銘といった特徴があります。上古刀で有名なものは、聖徳太子が使用したと伝えられる国宝「七星剣」と国宝「丙子椒林剣(へいししょうりんけん)」があります。
平安時代中期から室町時代末期にかけて作られた日本刀を古刀と呼びます。平安時代中期からは、上古刀にはなかった日本刀の原型となる姿、反りが見られるようになります。直刀から湾刀(日本刀姿)へと移行する過渡期に作刀された御物「太刀 伝天国」があります。
また、この時代には、童子切安綱、鬼丸国綱、正宗、村正、孫六兼元など、刀の愛好家でなくても一度は聞いたことのある、刀鍛冶が誕生しました。
江戸時代以降に作られた日本刀は、新刀です。戦国時代と比べて世の中が平和になったため、武器として切れ味を求めるだけでなく、見た目にも美しい芸術品としての要素が加わってきました。浮世絵師葛飾北斎が富獄三十六景で描いたような大波を刃文で表現してみたり、刀身彫という日本刀の刀身に緻密な彫物を彫刻する刀工が現れます。
江戸時代後期から廃刀令までに作られた日本刀は、新々刀です。幕末刀剣界の巨匠「水心子正秀」が復古刀論を提唱したため、新刀以降簡素化された鍛刀法ではなく、日本刀の重要要素である折れず、曲がらずを探求するため多くの刀鍛冶が砂鉄から玉鋼を生成して作刀された古刀を模範しました。
現代刀は新々刀の後、明治9年以降に作られた日本刀のことを言います。明治9年は廃刀令が出された年で、古美術品という目から見ると、ほかの時代に作られた刀よりも価値は下がりますが、月山貞一、宮本包則、宮入昭平など著名な刀工のものであれば、高値も期待できます。
サイズ・種別
日本刀にはいくつか種類があり、それによって買い取り価格も変わってきます。日本刀の種類は大きく分けて刀・脇指・短刀に分類されます。刀は刃長が2尺(60.6センチ)以上あり、室町時代から江戸時代末期にかけて使われていました。
脇指は、刀とセットで使用されていて、長さは太刀よりも短く、中には半分ほどの長さのものもあります。脇指よりもさらに短いのが短刀で、脇指が1尺(30.3センチ)から2尺未満なのに対して、短刀は1尺未満の長さです。刀のサイズによって査定価格は異なります。一番高値がつくのは刀で、脇指と短刀はその4割から6割ほどの価格になります。脇指と短刀はそれほど変わりありませんが、短刀のほうが若干価格が上回る傾向があります。もちろん脇指・短刀にも刀より高額になる物もあります。
日本刀には刀・脇指・短刀のほかに、太刀と呼ばれる種類があります。平安時代後期から室町時代前期まで、腰に佩(は)いて(=吊して)用いたものです。反りが高く、刃長はふつう2尺3寸~6寸(70~80cm)くらいあります。
太刀の中には後に名作と称賛されるものもあり、特に天下五剣(てんがごけん)は、名刀として知られています。天下五剣は、「童子切安綱」「三日月宗近」「鬼丸国綱」「大典太光世」「数珠丸恒次」のことです。
徳川吉宗の時代に作成された、享保名物帳(きょうほうめいぶつちょう)と言う名刀リストに名を連ね、その中でも特に最高傑作と言われています。リストに入っているのはさまざまな種類の刀ですが、選ばれた五つの剣はすべて太刀です。
刀装具や拵(こしらえ)の美しさ
日本刀の美しさを引き立てるのが、拵(こしらえ)です。拵(こしらえ)とは装具の一つで、鞘(さや)、茎(なかご)を入れる柄の部分や鐔(つば)などを総称した言葉です。多くの拵は美しい細工が施されています。
拵の美しさは美術品としての刀の価値を高め、査定でも高評価を得やすくなります。
安土桃山時代以降に拵は武士のお洒落道具としての一面も加わり発展。鞘(さや)・鐔(つば)・小柄(こつか)・目貫(めぬき)などに繊細な細工が施されるようになり、外装を美しく飾ることも、作刀の重要な工程の一つになりました。拵についてもう少し具体的に言うと、鞘・柄(つか)・茎(なかご)・鍔の総称です。こしらえが登場した当初は、使いやすさが重視されていましたが、武士の間に普及すると、帯刀している武士の家柄や階級、さらには魂をも表現するほど重要な意味を持つようになりました。
豊臣秀吉の時代に、拵についての逸話が残されています。五大老が秀吉に接見するため伏見城を訪れました。広間には刀架けがあり、五大老の刀が架けられていました。それを見た秀吉は、それぞれだれの刀かを間違えることなく言い当てたと言います。
黄金が散りばめられた拵は、美しいものが好みという宇喜多秀家のもので、古ぼけた皮の拵は、初心忘れるべからずをモットーとしている前田利家のもの。5振の中でも一番長い日本刀は、長刀が好みの父・上杉謙信を尊敬している上杉景勝が所有している刀と考えられます。さらに個性的な拵は、一風変わった考え方やスタイルを好む毛利輝元で、取り繕うことを嫌い、真剣勝負を好む徳川家康の拵は、シンプルなものでした。
このように拵には個性が強く表れていて、刀剣買取では刀の評価の一つとして大きく影響を与えています。
保存状態の良さ
古美術品は古いものに価値がありますが、保存状態が悪ければ、買い取り価格は大きく下がってしまいます。現在刀は使うよりもコレクションすることが目的になりますが、戦国時代は消耗品で、使い古されたものは破棄されるのが当たり前と考えられていました。劣化して使い物にならなくなった刀が多い中で、後世に受け継がれ現代にきれいな状態を保ち続けたものには価値があります。保存状態が良ければよいほど買い取り価格はアップします。
保存状態の良い刀は、誕生した当時に近い状態のことを言います。時代を超えて光り輝く日本刀には、高い値がつきます。反対に少しでも傷がついたり錆びていると、価値が下がってしまいます。
ただし、保存状態の良し悪しには好みがあり、鑑定士によっても評価が分かれます。たとえば刀についた傷は保存状態が悪い結果と見なされがちですが、鑑定士の中には、戦いによってついた打ち傷(誉れ傷)であるから、マイナスではないとする人もいます。日本刀特有の、刃紋の見え方についても同じことが言えます(ただしサビが広がっている場合は、減額の対象になります)。
刀の評価は、素人では判断を下しにくい部分がたくさんありますので、自己判断で売買を決めるのではなく、一度専門家に鑑定してもらうことをおすすめします。専門家は一見きれいに見える刀でも、詳細を調査し、傷がないかどうかチェックし、その刀の真の価値を評価しようと努めます。
特別保存刀剣に分類される刀は、保存状態が命と言われるほど、保存状態が大きく買い取り価格に影響します。サビや刃こぼれがあると、減額の対象になってしまいますので、注意が必要です。
真作か贋作か
贋作は簡単に言うとコピー品のことで、有名な作品の真似をした刀を指します。真作と比べると、かなり価値が下がります。贋作の日本刀は多く出回っているため、査定する際専門家は偽物かどうか、慎重に調べて見極めようとします。
その刀が本物かどうかは、素人では見極めづらく、判定は専門の鑑定士にしてもらう場合がほとんどです。鑑定士は日本刀の専門書や勉強会などで見極め方を学び、経験を積み重ねています。できるだけ高く刀を売るなら、確かな目を持つ専門家に査定を依頼しましょう。
その刀が本物かどうか知る一つの目安に、鑑定書があります。中でも特に信頼できるものに、公益財団法人日本美術刀剣保存協会が発行している鑑定書があります。刀の売買にこの書類があると、信頼性が高くなり、高く評価される可能性が出てきます。
公益財団法人日本美術刀剣保存協会は、1948年に設立以来、数々の刀や刀装具品などの鑑定を行ってきました。協会が美術品として認定すると、鑑定書が交付されます。発行している鑑定書には美術品としての評価によって保存刀剣・特別保存刀剣・重要刀剣・特別重要刀剣があります。
贋作の中には、精巧に作られたものもあり、本物かどうかプロでも見極めが難しいものがあります。そのため協会が発行した鑑定書が、参考になります。鑑定書があるかないかは、その日本刀が本物か偽物かどうかにかかわってきますので、刀に価値あるものを見出したら、鑑定を検討してみてはいかがでしょうか。
日本刀愛好家や、刀の売買を展開している業者からも厚い信頼を寄せられている公益財団法人日本美術刀剣保存協会の鑑定書は、適正価格で刀を売却する際に、頼もしい存在になることでしょう。
まとめ
日本刀の買取相場価格や高く売るコツなどについて解説しました。刀の買い取り価格は、保存状態や作られた時代、作者などに影響されます。素人では真の価値を見極めることが難しいので、できるだけ専門家に鑑定してもらうことをおすすめします。保存状態を良好に保ち、信頼の置ける確かな買取店に査定を依頼すれば、日本刀を高く売ることも夢ではありません。日本刀の買取相場価格や刀について少し知識をつけて、買取専門店に依頼しましょう。依頼先のお店は、買取相場価格に敏感で、刀の買取実績が豊富なところがおすすめです。