和泉守兼定(之定)
和泉守兼定(之定)は孫六兼元と並んで室町時代後期の美濃鍛冶を代表する刀工で、「定」の字のウ冠の中を「之」と切ることから「ノサダ」と称され、一般に 三代といわれる「疋定(ヒキサダ)」と区別されている。
しかし、「古刀銘集録」に「同二代目和泉守藤原ト打 明応年号切 定ノ字体真ニシテ多関住作打 永正ノ初ヨリ如此之ノ字切 故ニ之定ト唱」とあり、初めは定の字を楷書で切った事がわかり、明応2年紀、同8年紀の遺例がある。そして、「ノサダ」銘に転化したのは永正の初めというが、現存する作刀からすれば、明応8年11月以降で同9年8月以前とするのが正しい。
兼定(之定)は古刀期にあって珍しく受領「和泉守」を許された刀工で、「和泉守」の受領について永正7~8年といわれており、多くの刀剣書は「すぐれたる上手」 と述べている。
和泉守兼定作風の特徴、刀は形状が、通常寸がつまったもの、稀に長寸のものを見る。身幅広め、鎬造り、鎬高く、庵棟、中鋒延びるものがあり、先反り強くつく。
稀に身幅やや狭く、長寸で反りの高い太刀風の姿のものを見る。鍛えは、小板目つみ、流れ、白けるもの多い。地沸つき、細かに地景入るものもある。
刃文は、のたれに互の目交じりの刃多く、互の目、互の目丁子、大のたれ調に小互の目交じるもの、直刃に小互の目交じるもの等あり、尖り刃を交えたものが多い。腰刃を焼いたものがあり、匂口には締まるものとそうでないものとがある。刃区から水影の立つものを多く見る。
帽子は、直ぐに丸、乱れ込み地蔵風のもの、尖るもの、一枚風があり、やや深く返るものが多い。茎は、先栗尻、鑢目鷹の羽、稀に筋違もあり、銘は「和泉守兼定(之)作」「和泉守藤原兼定(之)作」が多く、「濃州関住兼定」「兼定」「濃州関住兼定(之)」「兼定(之)」は少ない。
短刀の形状は、平造り、三つ棟、内反り、ふくら枯れ気味のやや小振りのもの。刃文は直刃が最も多く、小互の目交じり節つくものあり、小沸つき、匂口締まりごころ。帽子は直ぐに小丸に返り、ほとんどが倒れる。茎は、先栗尻、鑢目檜垣、多くはハバキ下棟寄りに二字目銘。
(押形:刀 銘 和泉守兼定 名品刀絵図聚成 田野邉道宏著より転載)
(参考文献:名品刀絵図聚成 田野邉道宏著書・古刀新刀刀工作風事典 深江泰正著書・重要刀剣図譜より転載・引用・抜粋)