銃砲刀剣類登録証問題を考える28-2

銃砲刀剣類登録証問題を考える28-2 登録内容の不備と訂正(静岡県)
事例41
刀剣の銘字は時に不思議なものがある。例えば、この刀。茎には「加州藤原住家吉作」とある。通常なら「加州住藤原家吉作」いう語順となるはずであるが、刀鍛冶の家吉は自らこのように切銘している。昭和四十一年静岡県の登録審査はうっかり「加州住藤原家吉作」と記してしまい、登録証が交付された。
些細なミスではある。ところが、これを外国人が購入し、輸出監査証明を取得することになれば、些細とは言えなくなってくる。現物と銘文が異なるとして、輸出監査証明を出してもらえないからである。外国の方が「購入を検討する」というので、輸出監査証明の発行のことで、文化庁に問い合わせると、登録証を交付した県が、記載ミスと認めて文化庁に連絡をくれれば、輸出監査証明を出しましょう、ということであった。
そこで、静岡県の銃砲刀剣類登録担当者に電話で相談してみた。「登録証のコピーと現物の刀身、茎の写真を送ってください。検討します」という。そこで、登録証をスキャニングし、刀身の全体写真と茎の写真、さらに特別保存刀剣鑑定書のスキャンデータをメールに添えて、送信した。期待半分である。まあ、おそらく、いつものように「東京都に資料を回送しますので、現物確認審査を受けてください」という回答だろうなあと思っていた。
小1時間後、静岡県から電話があった。「申し訳ありませんでした。当方の記載ミスであることは明らかです」と言う。それで、「もし外国の方がお買いになった場合、輸出監査証明が取れるように、私どもから文化庁に連絡します」ということであった。しかも「もし不幸にしてご成約に至らなかった場合、おっしゃっていただければすぐに訂正再交付できるように取り計らいます」という。これにはびっくりした。なんという穏便で建設的な対応だろう。
刀は結局、外国人には売れなかった。残念だった。そこで静岡県の担当者の記憶が新しいうちに訂正再交付の手続きを踏むことにした。書類が送られてきて、そこにどこが異なるのか、記載し、送り返した。すると、数日後、新しい登録証が来た!
これまで、こうしたケースでは現物確認審査を経るのが普通だった。書類に必要事項を記入して、当該都道府県n担当者に送付し、東京都からの通知が来たら、期日に刀剣を持参し、長さ、反り、目釘穴の数、銘文などを調べ、東京都からの報告に従って記載ミスか否か判断し処理される。決して短くはない時間がかかるものである。
ところが今回、こちらが送信した情報を基に検討し、不備を認め、また、当方が嘘偽りの申し立てをしているわけではないと認めてくれたのである。おかげで無駄にも思える時間を浪費することなく、正しい登録証が交付されて助かった。何より刀が救われたのである。
対応してくれた担当者のSさんにお礼の電話をすると、Sさんは「昭和41年当時のつまらないミスで、販売の機会がふいになることになったら申し訳ありませんから」と言って笑った。
こういう柔軟で適切な文化行政が当たり前になることを願っている。
(登録証問題研究会)
*刀剣界新聞より転載・抜粋




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